天気予報でつかう言葉あれこれ

毎日なにげなく見聞きしている天気予報。

「良いお天気」という言葉は使われていないこと、お気づきでしたか?

 

人によっては晴れの日より雨の日の方が「良いお天気」だったり・・・

その人その人によって違いますものね。

そういう言葉は使わないようしているのです。

 

気象庁では天気予報などに使う予報用語を定めています。

 

天気予報が正しく伝わるように

・誰にでもわかること

・聞き取りやすいこと

・言葉は時代によって変化していくものなので、

みなさんの感覚とはなれてしまわないこと

など考えて定めているそうです。

 

たとえば、「荒れた天気」という言葉。

これは「雨か雪が降り注意報基準を超える風が予想される天気」に対して使うとされています。

一方、荒れた天気と書いて「荒天」という言葉は、

音で聞くと漢字が何通りも思い浮かんでしまいます。

ですから「荒天」という言葉は使わず「荒れた天気」を使う、としています。

 

「晴天」は使ってよい予報用語になっていますが

やはり同じ音の漢字があるので

ラジオなど音で伝える天気予報では使わず

「晴れ」か「晴れの天気」を使いましょう、と。

細かいところにまで気をつかっていますね。

 

今度、天気予報でつかわれている言葉を

ちょっと意識して見聞きしてみてください。

 

「だからこんな言い回しになるのね!」と

新たな発見があるかもしれません。

<1号>

桜の開花予想をしてみませんか?

今年も全国各地から桜の便りが届きました。
1月下旬に開花予想が始まり、桜前線の北上とともに、
3月中旬から5月初旬まで
次々に開花・満開宣言が発表されます。
桜を追ってワクワクする3ヶ月余り、
やはり桜は私たちにとって特別な花のようです。


全国58地点に気象台や測候所の定めた桜の標本木があります。
奄美地方と沖縄地方ではカンヒザクラという早咲きの桜が、
北海道の道東・道北では
エドヤマザクラやチシマザクラが標本木ですが、
その他の48地点はソメイヨシノが標本木となっています。

標本木は気象台の敷地やその周辺にあり、
気象台の職員が出かけていって観察して、
5~6輪以上咲いた日を開花日、80%以上のつぼみが開いた日を満開日
として発表しています。

2010年から気象庁に代わって、
民間企業や一般団体が独自の予測法を使って、早咲きの桜を除く、
標本木や自治体・公園などの桜の開花日を予想しています。
気象庁では開花予想はしませんが、生物に及ぼす
気候の影響を知ることを目的とした桜の開花観測を続けています。
気象庁さくら開花状況をご覧下さい)

 

では、桜の開花予想はどのようにするのでしょうか?
まず、桜(ソメイヨシノ)の開花の仕組みから説明します。
桜の花芽(将来花になる芽)は前の年の夏に作られますが、
葉が作る休眠物質(開花を抑制する物質)の働きで、
ある程度以上成長しないで秋に休眠状態に入ります。
休眠した花芽は一定の期間低温にさらされると休眠から目覚め、
開花の準備を始めます。そして、春になって気温が上昇すると、
花芽の成長が加速して、つぼみが膨らみ開花を迎えます。

桜が開花するためには、
休眠期間の寒さと目覚めた後の暖かさが必要です。
たとえば、秋から冬の気温が低ければ早く目覚め、
目覚めてから開花の準備をする期間の気温が高いと開花が早まります。
しかし、早く目覚めてもその後も低温が続けば、
開花は足踏み状態となります。

 

日本は南北に細長いので、
地域によって開花時期を決める要因が異なります。

●温暖な九州では、休眠からの目覚めの早さが、
そのまま開花の早さにつながります。
●四国と本州の関東以南では、休眠からの目覚めの時期と、
それ以降の気温の両方が開花に大きく影響します。
●北日本では、冬の気温が低く毎年1月半ばには休眠から
目覚めているので、2月以降の気温で開花の時期が決まります。
●奄美・沖縄地方は、低温にさらされる期間がないため、
ソメイヨシノは咲きません。

 

前回のコラム「マイ標本木をみつけましょう!」を読んでいただけましたか?
身近にあるソメイヨシノを選んでマイ標本木を決め、
去年と今年の秋から冬(11月から1)の気温の推移を比べて
「目覚めの時期は早まりそう?遅くなりそう?」 23月の気温から、
「開花の準備は順調に進みそう?やや停滞気味?」などと、
マイ標本木の開花予想をしてみてはいかがでしょうか?
桜の開花を待つ楽しみがひとつ増えるかもしれませんね。

2018年3月31日 東寺(京都)の夜桜
月2回の満月=ブルームーンとの競演(撮影:32号)

<66号>

マイ標本木を見つけましょう!

「標本木」って言葉を聞いたことはありますか?
そう!桜…ソメイヨシノの開花発表で耳にすることが多いですよね。

気象庁の生物季節観測(※1)で開花判断などに用いるための草木で、
桜だけでなく四季を代表する数々の草木が、たとえば、横浜市ならば、
以下の写真のように、横浜地方気象台の構内に植えられています。

 ソメイヨシノ

 アジサイ

 ヤマツツジとススキ

 サルスベリとイロハカエデ


□ 
でも、同じ市内とはいえ、中心地で海沿いの気象台と郊外では、
気温も天気も違うことがあり、草木の開花にも差がありそうです…
ということで、自分だけの標本木=マイ標本木を見つけましょう!

 ヤマボウシ

 ビワ(昨年比)

 アジサイ(生長記録)


□ 
気象台から「〇〇が咲いた」「△△が鳴いた」と発表されるのも待ちつつ、
二十四節気や七十二候(※2)で日本語表現の素晴らしさにも触れながら、
自分で感じて季節を先取りする感覚って素敵ですよね。

自分なりに、昨年より暖かい?寒い?なんて話ができるっていいね、
「今年は暖かいから昨年より早く咲くよ!」なんて話せたらいいね。

夏休みの宿題…植物観察や生長記録みたいになってもいいですね!
今は、いただいた種から芽吹いたこのヒマワリの生長が楽しみです♪

 ヒマワリ(生長記録)

 

<サニーちゃんのお天気メモ>

 (※1)生物季節観測
□□□□□□植物の開花や動物の初見・初鳴などの日を目と耳で観測して記録し、
□□□□□□季節の進み具合や気候や天候の変化をお知らせしているんだよ。
□□□□□□その観測の概要は、気象庁のホームページ も参考にしてね!

(※2)二十四節気(にじゅうしせっき) 七十二候(しちじゅうにこう)
□□□□□□二十四節気 は、半月ごとの季節変化を示し、
□□□□□□七十二候 は、それをさらに約5日おきに分けているんだよ。
□□□□□□それぞれクリックして過去の記事も見てね!
□□□□□□(七十二候は春だけの解説ですが…)

   <ゼフ>

おうちにもある?!お風呂に現れる気団変質 - 日本海温泉物語

<なぜ日本海側ばかり雪が降るの?>
太平洋側にお住まいの方の中に、子供のころ、
「どうして自分たちの地域にはなかなか雪が降らないの?
あそこ(日本海側)ではあんなにたくさん雪が降るのに!
自分たちのところにもたくさん降って欲しい!!」
と悔しい思いをされたことはありませんか?

日本海側では数メートルもの積雪があり、道路の両端は雪の壁。
教科書で見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。
それなのに、太平洋側では南岸低気圧による降雪を除いて、
せいぜいちらつく程度(※1)
どうしてこんなに大きな差が出来るのでしょうか。


<お風呂場で…>
冬場のある日、私の家で不思議な現象を見つけました。
お風呂のお湯は冷めている(湯気はたっていない)のに、
お風呂のふたを開けると、隣にある鏡が曇るのです。

お風呂場は、みんなが入り終わった後、
換気のために少しだけ窓を開けて浴室の換気扇を回します。
風呂桶にはふたをしていますが朝になると当然冷めています。

風呂桶の横には鏡があって、
風呂場も当然冷えているので鏡は曇っていません(写真1)

朝、風呂のふたを開けてしばらくすると、
曇っていなかった鏡が曇り始めます(写真2)

お風呂場は冷えているし、お湯も冷めているのに、
どうして鏡が曇るのでしょう?
そのヒントは…
日本海側にだけ大量に雪が降る原因と同じところにありました。


<気団変質ってなぁに?>
冬になると、ユーラシア大陸から非常に冷たい北風が日本に向かって吹いてきます。
その北風は必ず日本海を通って日本にやってきます。
冬場の日本海は、とても海水浴できるような温度ではありませんが、
シベリアからの北風に比べるとずいぶんと暖かいのです。

冷たい北風が比較的暖かい海の上を通ることで、
大陸のカラカラに乾いた空気に水蒸気が供給されます。
日本海でたっぷり湿気を吸った空気が日本海側にやってきて、
日本列島の中心を走る脊梁山脈(※2)にぶつかるとそこで雪になるのです。
乾いた北風が日本海で暖まる…まるで日本海が温泉のようになっています。
山にぶつかって雪を降らせてしまった後は、
カラカラの乾いた風だけが太平洋側にやってくることになります。


実はこれと同じことがお風呂場で起こっていました。
外から入ってきた冬の乾いた風が風呂桶の残り湯の上を通ることで湿気を含み、
鏡で結露していたのです…↓↓↓こんなイメージで!



大規模な冬の気団変質が、
お風呂場で体験できるというのはとても面白い事ですね。

 

<サニーちゃんのお天気メモ>
(※1)太平洋側…特に関東地方では、
本州の南を進む南岸低気圧で雪になることが多いんだよ。
同じ雪でもメカニズムが違うって面白いよね~過去の記事も参考にね!

(※2)日本の脊梁山脈(せきりょうさんみゃく)
列島を日本海側と太平洋側に分けて分水嶺となっている高い山脈なんだよ。

<45号>

19世紀の観測機器にロマン求めて…

6月1日は気象記念日でしたね。
1年前の記事を読んで思い出してね
2015年5月28日の記事
2015年6月30日の記事


気象観測の歴史は、古くは紀元前6世紀からギリシアで風向の観測が、
紀元前4世紀からインドで雨量観測の記録があります。
かなり古い時代から人々が天気に興味を持っていたことが分かりますね。
農耕が中心の生活では、天気変化をつかむことはかなり重要だったのではないでしょうか。

その気象観測ですが、トリチェリの真空(1643年)(※1)より水銀気圧計の発明がなされ、
その後19世紀からは機器による観測が主流となっていきます。
1960年には世界初の気象衛星がアメリカ航空宇宙局より打ち上げられるなど、
観測技術の
発展には目覚ましいものがありますが、
現在でも視程観測や雲量、雲の種類天気観測など目視に頼る観測も多いのです。

 

さて、今でも19世紀当時を垣間見る事が出来る…
そんな気象観測の道具がいくつかあるのをご存知でしょうか?

・天気管(ストームグラス)
・晴雨予報グラス(液柱型気圧計の一種)
・ガリレオ温度計 …などがありますが、
今回はこの中から天気管にスポットを当ててみようと思います!

まず、天気管とは、どのようなものでしょうか…

天気管とは、こちらの写真のように、
ガラス管の中に水溶液と結晶が
入っているものです。(※2)

「天気」管という名前の通り、
この中にある結晶の変化で天気を予想することが出来る!
とされていた装置です。
天気変化に伴い、中にある結晶がさまざまに変化する、というのですから、
とっても興味深いですよね!


では、どんな風に変化するのでしょう?
結晶の変化と天気の関係はどうなっているんでしょうか?

天気管の結晶変化と天気の関連は諸説あるようですが、
大体次のような解説がなされている場合が多いです。
・晴れ傾向なら管内の固形分は完全に底に沈み液体は澄みきる
・雨に変わる前は、沈殿物の量が徐々に増え星のような形のものが液中を浮遊する
・嵐やひどい風の前は固形分の一部が溶液の表面まで達し、
大きな葉のような形に育ち、溶液は濁って発酵しているように見える。

本当にこんな風に、天気の変化で結晶の様子が大きく変わったらすごいですよね!

…しかしながら、実際はガラス管が密封されてしまっているので、
気圧や
湿度の影響をほとんど受けることがありません。
よって、嵐や風の予想は難しいと言わざるを得ないですね~残念です。


では、結晶はどんな時に変化するでしょうか?
実は天気管の結晶は、周辺の温度によって大きく変化します。


2016年6月16日 室温が高く、結晶は底に溜まっているのみ


2016年2月25日 室内が冷え込んで結晶が成長~星状の結晶も浮かんでいます


また、温度が変化したことで新たに生まれた結晶を確認することも

このように、温度で結晶が変化するものの、
天気管ではとても天気を予想することはできず、
19世紀の観測機器も現代の気象予報技術にはとてもかないません。

でも、この天気管の結晶を眺めていると、19世紀の様子が思い浮かびませんか?
正確な予想は出来なくても、天気管を眺めることで当時の様子に想いを馳せるのは、
とてもロマンのあることではないでしょうか?

ただ、天気管にはまだまだ分からないことも多いようで、
真剣に研究している学者さんもいらっしゃいます。
私たちはインテリアとして飾り、19世紀のロマンを感じ
ながら、
その様子を観察するのが楽しいかもしれません。

天気を調べる道具は自分で工作する事も出来ます。
自分で作った観測機で雨量や風速を調べてみるのも面白いですよ!

サニーエンジェルスのサイエンスカフェやお天気講座で、
工作をやっているときもあります!
ぜひ参加してみてくださいね!

 

<サニーちゃんのお天気メモ>

(※1)トリチェリの真空って?
1643年に、イタリアのエヴァンジェリスタ・トリチェリという物理学者が、
「なぜ10メートルより深い井戸から水を吸い上げる事が出来ないのか」を
説明するために行った実験の事。

一方を閉じたガラス管の中を水銀で満たし、
水銀を満たした皿の上でこのガラス管を立てると、
ガラス管が1mの時、中の水銀は76㎝の高さにしかならず、それより上の部分は真空になることを発見したんだよ。この実験で中の液体が大気によって押されていること、
また場所や日によってこの高さが変わることから、水銀気圧計が生まれたんだって!


(※2)天気管(ストームグラス)の中は?

ガラス管の中には、塩化アンモニウム、ショウノウ、エタノールっていう
化学物質と水が入っていて、塩化アンモニウムとショウノウの結晶が、
いろんな形を作ってくれるの。
19世紀の航海にとって、天気を知るための大事な道具だったそうよ。

<45号>

Mr.トルネードをご存知ですか?

先日、NHKドキュメンタリーで

ブレイブ 勇敢なる者「Mr.トルネード~気象学で世界を救った男~」

という番組を放送していました。
気象学者 藤田哲也さんを特集した内容でした。

「藤田哲也」
(ふじた てつや、英: Tetsuya Theodore “Ted” Fujita)
1920年10月23日 – 1998年11月19日
アメリカ合衆国の気象学者。
出身地は福岡県。

 

お名前を聞いて、「知っている!」という人は少ないかと思います。
実は、気象の世界ではとても有名な方なのです。
そして、気象予報士なら、(おそらく)すべての人が知っています。

その理由は、気象予報士の試験勉強で学ぶからです(^_^;)
下の名前「哲也」までは知らなくても、気象で「藤田」と聞けば、
思い浮かぶのが

Fスケール(注1)

という単語。

 

日本でも、大きな竜巻が発生して被害をもたらすことがありますね。
その竜巻の強さを分類する単位として、Fスケールというものがあります。

F1、F2、F3・・・と数字が大きくなるほど、強い竜巻になります。
この「F」は、藤田博士のお名前の頭文字をとって付けられました。

気象庁のHPで「竜巻等の突風データベース」(注2)を検索してみますと、
2013年9月2日に埼玉県さいたま市、越谷市、松伏町、千葉県野田市、茨城県坂東市で
発生した竜巻が
F2として報告されています。

日本で観測される竜巻は、ほとんどがF1以下ですが、
F2だった上記の竜巻は被害が大きく、記憶に残っている方も多いと思います。

 

さて、話を藤田博士に戻しましょう!

藤田博士は、福岡県北九州市で生まれ、
元は機械工学、物理学を専攻していたので、気象学は独学だそうです。
雷雨研究の論文がきっかけで、32歳でアメリカへ渡り、
シカゴ大学で気象の研究を始めました。

1975年6月24日 アメリカのジョン・F・ケネディ空港で、
イースタン航空66便が着陸に失敗し、115人が死亡する事故が起きました。

当初、事故の原因はパイロットの操縦ミスと考えられていましたが、
管制塔とパイロットのやり取りから、着陸時に強い風が吹いていたのではないか、
ということで、気象学者の藤田博士に調査依頼が来たのです。

藤田博士は、調査、解析の結果、イースタン航空66便は、
着陸直前に「ダウンバースト」(注3)に遭遇して墜落したと報告しました。

ダウンバースト。

ニュースなどで耳にしたことがあるかもしれません。
気象現象のひとつで、積乱雲から爆発的に吹き降ろす気流、
そしてこれが地面にぶつかって吹き出す破壊的な気流のことを、
「ダウンバースト」と言います。

下向き(ダウン)と爆発的に広がる(バースト)を組み合わせて、
藤田博士が作った新語です。


(出典:気象庁HP)

藤田博士の考えに、多くの航空関係者が賛成しましたが、
一部の気象学者は「観測による実証がないので、そんなもの、信じられない…」と、
ダウンバーストについて否定していました。

ところが、藤田博士はレーダーの研究者と協力して、
ダウンバーストの観測を続けました。
写真やデータをとって、ダウンバーストの発生を証明してみせたのです。

航空機にとって、離陸時や着陸時にダウンバーストに遭遇すると、
墜落に直結するほど深刻な問題です。ですから、
藤田博士の発見は航空機の安全にとても大きな影響をもたらしたのですね!

藤田博士は、1989年、フランス国立航空アカデミー金メダルを受賞しました。
気象界のノーベル賞と言われている素晴らしい賞だそうです。

 

さて、その恐ろしいダウンバーストは、
日本でも年に何回か発生しますが、アメリカでは被害が深刻だそうです。
飛行機は安全に飛べるのでしょうか?

安心してください!

ダウンバーストの発見後、空港にはレーダーが設置され、
風の急な変化を観測して、ダウンバーストの発生を数分前に予知できるようになりました。
その結果、ダウンバーストによる航空機の事故はほぼ無くなりました。

今回のコラムで、藤田哲也さんといえば、
竜巻やダウンバーストを研究した気象学者であると覚えていただけたら嬉しいです。

 

最後に本の紹介です。
サニーエンジェルスのメンバーが、藤田博士の自伝を貸してくれました。
古本屋さんで買ったそうです。
早速、読みましたところ、生い立ちからわかりやすく書かれていておもしろかったです。

『ある気象学者の一生』
兄 藤田哲也 著
弟 藤田碩也 編集
(自費出版による自伝。非売品)

※現在、復刻本が販売されているようです。

 

 

 

 

 

<サニーちゃんのお天気メモ>

(注1)Fスケールは、竜巻の強さを分類する世界的単位。
風速と被害状況で分類するんだよ。
<藤田(F)スケール>
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado1-2.html
<日本版改良(JFE)スケール>
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado1-2-2.html
※平成28年4月より突風調査に使用されています。

(注2)竜巻やダウンバースト等の突風事例について、
気象庁が把握したものを
一覧で見られるよ。
1年の中でもたくさんの事例が発生しているんだね。
<竜巻等の突風データベース>
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/tornado/index.html

(注3)積乱雲からの下降気流が途中で弱まることなく地表付近まで降下し、
放射状に広がって、強く吹き出す風を起こす現象をダウンバーストって言うんだよ。
水平方向の広がりが4km以上をマクロバースト、
4km以内をマイクロバーストと分類して呼ぶこともあるよ。(出典:気象庁HPより)

<18号>

 

 

三寒四温乗り越えて~春が来た!

暖かい日が多くなってきましたね♪
気温が10度を割り込むのは深夜から明け方の一番寒い時間帯だけで、
日中に10度を下回わる日は殆ど無くなってきて日差しにも暖かさを感じ、
良く晴れた日は特にホッとできる時間が多くなってきたのではないでしょうか。

暦では春の訪れは立春とされていますが、実はこの頃はまだとても寒い時期で、
平年値で見ても、1月下旬ごろから2月上旬が最低気温の底となっています。
この頃には、まだ春の訪れを実感できるものはかなり少なくて、
日向でも、オオイヌフグリタンポポが咲いている事は滅多にありませんが、
この頃から気象的には少しずつ変化が始まっていて、
晴れた日には、日差しに変化も感じられるようになってきます。(※1)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
以下のグラフは、自宅付近(奈良県北西部)の気温変化を記録したものです。

2015年11月から2016年3月までの日ごとの最高/最低気温(屋外)を表していて、
11月から1月頃までの間、気温は上下しながらも下り勾配が見て取れますが、
日ごとの差はさほど大きくなく推移し、1月下旬頃が気温の底?という感じです。
そして、立春前後から気温は上り勾配に変わるのですが凸凹も目立ってきますね!

気温の凸凹(振れ幅)は晩秋から真冬の間より、2月頃の方がずっと大きいようで、
12月下旬~1月下旬頃には殆ど無かった日中の最高気温20度以上という気温が、
現れたかと思ったらすぐまた10度前後まで下がったりする中で…
特に高い気温が現れた次の日が低い事が多く、落差がとても激しく、
まるで気温のジェットコースターです。

そして、まだ寒い立春の頃に20度を超える様な気温が現れる事で、
「温暖化の影響?」「今年は暖冬だから春が早く来たのかな?」
「やっぱり最近の異常気象?」と思われる方も多いようですが…安心してください!
これは、春先に通過する低気圧の影響で、実は普通の事なんです!

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別の視点も加えて、南関東・横浜の2月中旬を集中して見てみましょう。
以下は、今年の春一番が吹いた前後の気温・気圧変化と天気図です。



まず、グラフと2月14日の天気図と合わせて見てみますと、
14日に横浜は低気圧の暖域(※2)と言われる部分にあって、
暖かい南寄りの風が入っていますが、前日13日中頃から風向が南寄りに変わり、
気温(赤いライン)の急上昇と、気圧(青いライン)の急下降がはっきり分かりますね。

そして、気温ピークの14日後半、同じ頃に最低気圧を記録した直後に、
風向が北寄りに変わって気温が急下降、逆に気圧が上昇に転じています。
さらに、15日の天気図では、寒冷前線(※3)が通過したことも分かりますし、
また、大きな範囲で見てみますと、いわゆる「西高東低」と言われる、
西に高気圧、東に低気圧がある「冬型」になっているのも分かりますね。

低気圧は、周辺の空気が中心に向かって反時計回り(左回り)に動きますので、
低気圧が進む前面では、総じて南寄りの風、後面では北寄りの風になります。
低気圧が西から東へ進むと、まずは南寄りの風、通過後、北寄りに変わりますが、
この風の影響はとても強力で、暖かい南寄りの空気が入ってきて気温は急上昇、
低気圧通過後に北寄りの風になり大陸の冷たい空気が入ってきて気温は急下降、
これが、この春先の気温のジェットコースターの正体です。

急に暖かくなって、春が来たと思ってホッとしていたら、また急に真冬の気温に…
ヤキモキしつつ、きっと桜や梅もこんな気持ちで春を待っているのでしょうね。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
昔から、春先のこの時期を、
三寒四温と言う言葉で表していますが、広辞苑では、
『3日ほど寒い日が続いた後に4日ほど暖かい日…それを交互に繰り返す現象』、
別の解釈では『春になる前には3回ほど寒い時期があって4回ほど暖かくなる』とも…
まさに、この現象にピッタリの言葉ではないでしょうか~そして、
これは昔から認知されていて、春の訪れを告げるものと理解されていたのですね。

三歩進んで二歩下がる…そんな三寒四温を繰り返してヤキモキしている間に、
いつの間にか桜舞い降りる春本番がやってくるのです。
桜ひらひら舞い降りて落ちて♪~今は、まさに気温の春
でも、ここまでの気温は単に右肩上がりの上昇ではなく凸凹感が満載…
春に向かって産みの苦しみ紆余曲折~こんな苦難の道のりがあったのです!

普段は気温の変化や、植物や動物の動きから春を感じる事が多いですが、
春爛漫・百花繚乱…などなど、本格的な春を告げる言葉も…
日本では、こんな素敵な言葉で春を感じる事も出来るんですね(^_^)

 


<サニーちゃんのお天気メモ>

(※1)過去の記事「心の春を感じましょう!」も参考に見てね(^^♪

(※2)暖域って何でしょう?
低気圧に伴われた温暖前線と寒冷前線に挟まれた暖かい南風が吹き込むエリア
(名前のとおりなんだね♪)…低気圧の南側にあたる部分なんだよ!

(※3)寒冷前線って何でしょう?
低気圧の後方、寒気⇒暖気に向けて進む前線で積乱雲による強い雨が降り易いよ!
(一方、前方の温暖前線は、暖気⇒寒気に向けて進んでシトシト雨が降り易いよ)

 

<45号>

四国の雪

皆さん、四国の冬といえば、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
黒潮洗う暖かな足摺(あしずり)岬などを想い浮かべる方も多いでしょうね。
前回のコラムでは、横浜と同じ太平洋側の名古屋で、
強い冬型の気圧配置の時に関ケ原の辺りから雪雲が流れ込んで、
大雪になるお話しがありましたが、今回は、四国の雪についてのお話しです。

意外に思われるかも知れませんが、
四国にも冬型の気圧配置の時に雪が降る地域があるのです。
標高の高い四国山地だけでなく、
愛媛県の中部【中予(ちゅうよ)地方】の内陸部や、
南部【南予(なんよ)地方】、高知県の西部の内陸でも降ります。


<上空の風(季節風)>
では、なぜ南国の四国でも冬型の気圧配置の時に雪が降るのでしょうか?
それは、西から北西寄りの冷たい空気の季節風が関門海峡を渡り、
四国西部に流れ込むことによります。

雪雲が愛媛県の南予地方に流れ込んでいる様子が、
このレーダー画像からわかりますね。

愛媛県の久万高原(くまこうげん)町などにはスキー場があり、
冬には多くのお客さんで賑わいます~もっとも人工降雪機の力を借りていますが…

先日、1月19日と24日は強烈な寒波によって西日本の各地で大雪になりました。
この時の愛媛県の雪について、少し詳しく見ていくことにしましょう。
19日は松山市の南およそ30kmの久万高原町で40cmの大雪になり、
24日は松山の南西およそ45kmの大洲(おおず)市で10cmほど積もりましたが、
どちらのケースでも、海沿いの平野の松山や今治(いまばり)では、
ほとんど降っていません。
                                                  (※1)


では、同じ冬型の気圧配置でも、
雪がたくさん降る場所に違いがあるのは、なぜでしょうか?
それは、空の上の高いところでの風向きと風の強さによります。

福岡の上空の風向きや風の強さと、
愛媛で降った雪の量との関係を調べてみると、
およそ1500mの高さの風向きが西から西北西で強くなった時、
久万でたくさんの雪が降ります。

大洲でもこの高さの風が西寄りの時に雪が多くなっていますが、
久万ほどこの関係は強くなくて、むしろ、
800mほどの高さで西寄りの風とともに、
北寄りの風が強くなった時にたくさん降ります。

いずれのケースも、風下側には大きな山並みが控えており、
上空の風は、これらの山並みにぶつかって、
山の斜面に沿って強制的により高いところへと運ばれて雲を作り、
時として南国とは思えないほどのたくさんの雪を降らせるのです。

空の高いところの風の通り道や、
風がぶつかる山の位置や高さが関係していることがわかりますね。

1月19日の久万高原町内の様子です。
まさに雪国!南国の四国とは思えませんね。

久々にユキ積もりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(写真は3枚とも久万高原町公式HP内「まちの話題」よりお借りしました。)


<上空の気温>
次に、上空の気温と降る雪の量の関係についてお話ししましょう。
先ほどの1500mの高さで見ますと、
寒くなると雪の量が多くなる傾向がありますが、
この関係はあまり強くなく、
さらに高い4000~5500mで気温が下がると大雪になります。
大洲で大雪になった1月24日の午前9時の福岡の上空およそ4000mでは、
-34.4℃まで気温が下がっています。


<大雪の条件>
2005年(平成17年)の12月も、
冬型の気圧配置が長く続いて寒さが厳しく、久万や大洲などで大雪になり、
八幡浜(やわたはま)などのみかんの産地では、
穫前のみかんが寒さと雪で傷められ、大きな被害が出ました。
この時のことを参考に、大雪が降りやすくなる条件について、
簡単にまとめると次のようになります。
・福岡の上空およそ1500m以下の風が西北西寄りで強いこと
・福岡の上空およそ4000~5500mの気温が低いこと
・およそ4000~5500m以下で空気が低いところから高いところへと昇りやすいこと

 

《サニーちゃんのお天気メモ》

(※1) 四国のアメダスでは積雪の深さは測っていないの。
□□□□□□アメダスでは降った雪を熱で融かして液体の水にして、
□□□□□□雨と同じ降水量として0.5mm単位で測っているんだよ。

 

<オカメインコ>

 

 

同じ太平洋側の雪でも…

季節は、寒の内(※1)
この冬は暖冬傾向だと感じていた方も多かったと思いますが、
一番寒い時季を待っていたかのように寒波が到来しましたね。

強い冬型気圧配置は日本海側に雪を降らせますし、
その隙間を縫うように走り抜ける南岸低気圧は、
太平洋側にも多くの雪を降らせることがあります。
その仕組みは、以下のコラムも参照してください。
□□↓↓↓
<季節風の話>
http://sunny-angels.jp/blog/?m=201212

<南岸低気圧の話>
http://sunny-angels.jp/blog/?m=201301

<すじ状の雲の話>
http://sunny-angels.jp/blog/?m=201412


下図のように、今年1月18日明け方には、
南岸低気圧により横浜で積雪があり、
また、1月20日朝には、
冬型気圧配置により名古屋で積雪がありました。
□□↓↓↓


上図の赤枠青枠で、何か違いに気づきませんか?

どちらも3時間での降雪・積雪(※2)で比べると、
次のような違いがありますね。

①    積雪深 ⇒ 横浜:5cm名古屋:9cm
②    降水量 ⇒ 横浜:15.5mm名古屋:5.0mm(※3)
③    気温 ⇒ 横浜:0℃台名古屋:氷点下
④    雪水比 ⇒ 横浜:0.3cm/mm名古屋:1.8cm/mm
雪水比(ゆきみずひ)は次のように計算します。
□□↓↓↓


雪水比
とは、降水1mm当たりの降雪量(cm)で、
小さいほど積もる効率が悪く、
大きいほど積もり効率が良い…つまり、
小さいほど水分が多い雪(湿った雪=ボタン雪イメージ)
大きいほど水分が少ない雪(乾いた雪=粉雪イメージ)

南岸低気圧による関東地方の雪は、
地上の気温が0℃~1℃で降ることが多く、
雪水比0.5前後が大半で、重い雪ゆえに、
着雪・電線断・落雪・凍結などの影響が出やすい。

一方で、同じ太平洋側でも、名古屋は、
強い冬型気圧配置で琵琶湖や関ケ原を通り抜けた雪雲、
その影響での降雪が多く、雪水比1.5を超える。


たかが雪・されど雪…こんな違いも意識して、
雪のたびに雪水比を計算したり考察することも、
気象や天気に興味を持つキッカケになるのかも!

 

《サニーちゃんのお天気メモ》

(※1)寒の内
□□二十四節気の小寒~大寒~立春前日(節分)までの時季
□□小寒:寒の入り~寒の内(寒中)~立春:寒の明け
今年は、1月6日~2月3日までが、寒の内なんだよ!

(※2)降雪・積雪
□□降雪量 ⇒ その時間内に新しく積もった(積もる)雪の量
□□積雪量 ⇒ 自然の状態でのその時刻の雪の深さ
□□雪の重さで圧縮されたり、太陽熱や雨で溶けたりして、
□□積雪量は変化するんだよ!

(※3)降水量
□□降水量 ⇒ 雪を雨量計で溶かして降水量として観測
□□雨量計にヒーターなどが付いてるんだよ!

<ゼフ>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天に伸びる光の帯~太陽柱

夕日を見ていて
太陽の上下に、光がまっすぐ伸びているのを
見たことはありませんか?

これは太陽柱(サンピラー)と呼ばれる現象で
太陽が低い位置にある朝か夕方によく見られます。

雲の種類で言うと巻層雲や高層雲が広がっている時が多いです。

雲の中にある小さな氷の粒が規則正しく並ぶことで
太陽からの光を反射し、柱のように輝いて見えるのです。

氷の粒が関係しているため、寒い時期に良く見られますが
巻層雲、高層雲などが一様に広がっている時なら
一年中見られる可能性があります。

日の出前の東の空や、
夕方なら西の空を、気を付けて見てみてくださいね。

また、日が沈んで「今日は太陽柱見えなかったな・・・」と、
すぐにあきらめて帰らず
もう少し余韻を楽しんでみてください。

日没後10分くらいに現れたり
思いがけず、ハッキリと輝き出すことがあります。



太陽柱に出会えたら
みなさんは、どう感じるでしょう?

朝日の時は
□□□□□さあ!いくぞ!
ですか?
□□□□□
あ~一日始まっちゃうなあ・・・
かな?

夕日の時には、
□□□□□
一日無事に終わって、よかった~

□□□□□もう終わっちゃうのかあ・・・

□□□□□やっと終わる!

□□□□□おひさまが、またね!と言ってるみたい。


みなさんと、おとなりにいる人は
どう感じているのでしょう?

特にお子さんの感想、聞いてみてくださいね。

まっすぐに伸びる光の帯とともに
素敵な思い出ができると思います。

 

《サニーちゃんのお天気メモ》

寒い地方で見られるダイヤモンドダストでも、
太陽柱と同じような現象が見られることがあるのよ。
私もいつか、見てみたいな。

<1号>