Mr.トルネードをご存知ですか?

先日、NHKドキュメンタリーで

ブレイブ 勇敢なる者「Mr.トルネード~気象学で世界を救った男~」

という番組を放送していました。
気象学者 藤田哲也さんを特集した内容でした。

「藤田哲也」
(ふじた てつや、英: Tetsuya Theodore “Ted” Fujita)
1920年10月23日 – 1998年11月19日
アメリカ合衆国の気象学者。
出身地は福岡県。

 

お名前を聞いて、「知っている!」という人は少ないかと思います。
実は、気象の世界ではとても有名な方なのです。
そして、気象予報士なら、(おそらく)すべての人が知っています。

その理由は、気象予報士の試験勉強で学ぶからです(^_^;)
下の名前「哲也」までは知らなくても、気象で「藤田」と聞けば、
思い浮かぶのが

Fスケール(注1)

という単語。

 

日本でも、大きな竜巻が発生して被害をもたらすことがありますね。
その竜巻の強さを分類する単位として、Fスケールというものがあります。

F1、F2、F3・・・と数字が大きくなるほど、強い竜巻になります。
この「F」は、藤田博士のお名前の頭文字をとって付けられました。

気象庁のHPで「竜巻等の突風データベース」(注2)を検索してみますと、
2013年9月2日に埼玉県さいたま市、越谷市、松伏町、千葉県野田市、茨城県坂東市で
発生した竜巻が
F2として報告されています。

日本で観測される竜巻は、ほとんどがF1以下ですが、
F2だった上記の竜巻は被害が大きく、記憶に残っている方も多いと思います。

 

さて、話を藤田博士に戻しましょう!

藤田博士は、福岡県北九州市で生まれ、
元は機械工学、物理学を専攻していたので、気象学は独学だそうです。
雷雨研究の論文がきっかけで、32歳でアメリカへ渡り、
シカゴ大学で気象の研究を始めました。

1975年6月24日 アメリカのジョン・F・ケネディ空港で、
イースタン航空66便が着陸に失敗し、115人が死亡する事故が起きました。

当初、事故の原因はパイロットの操縦ミスと考えられていましたが、
管制塔とパイロットのやり取りから、着陸時に強い風が吹いていたのではないか、
ということで、気象学者の藤田博士に調査依頼が来たのです。

藤田博士は、調査、解析の結果、イースタン航空66便は、
着陸直前に「ダウンバースト」(注3)に遭遇して墜落したと報告しました。

ダウンバースト。

ニュースなどで耳にしたことがあるかもしれません。
気象現象のひとつで、積乱雲から爆発的に吹き降ろす気流、
そしてこれが地面にぶつかって吹き出す破壊的な気流のことを、
「ダウンバースト」と言います。

下向き(ダウン)と爆発的に広がる(バースト)を組み合わせて、
藤田博士が作った新語です。


(出典:気象庁HP)

藤田博士の考えに、多くの航空関係者が賛成しましたが、
一部の気象学者は「観測による実証がないので、そんなもの、信じられない…」と、
ダウンバーストについて否定していました。

ところが、藤田博士はレーダーの研究者と協力して、
ダウンバーストの観測を続けました。
写真やデータをとって、ダウンバーストの発生を証明してみせたのです。

航空機にとって、離陸時や着陸時にダウンバーストに遭遇すると、
墜落に直結するほど深刻な問題です。ですから、
藤田博士の発見は航空機の安全にとても大きな影響をもたらしたのですね!

藤田博士は、1989年、フランス国立航空アカデミー金メダルを受賞しました。
気象界のノーベル賞と言われている素晴らしい賞だそうです。

 

さて、その恐ろしいダウンバーストは、
日本でも年に何回か発生しますが、アメリカでは被害が深刻だそうです。
飛行機は安全に飛べるのでしょうか?

安心してください!

ダウンバーストの発見後、空港にはレーダーが設置され、
風の急な変化を観測して、ダウンバーストの発生を数分前に予知できるようになりました。
その結果、ダウンバーストによる航空機の事故はほぼ無くなりました。

今回のコラムで、藤田哲也さんといえば、
竜巻やダウンバーストを研究した気象学者であると覚えていただけたら嬉しいです。

 

最後に本の紹介です。
サニーエンジェルスのメンバーが、藤田博士の自伝を貸してくれました。
古本屋さんで買ったそうです。
早速、読みましたところ、生い立ちからわかりやすく書かれていておもしろかったです。

『ある気象学者の一生』
兄 藤田哲也 著
弟 藤田碩也 編集
(自費出版による自伝。非売品)

※現在、復刻本が販売されているようです。

 

 

 

 

 

<サニーちゃんのお天気メモ>

(注1)Fスケールは、竜巻の強さを分類する世界的単位。
風速と被害状況で分類するんだよ。
<藤田(F)スケール>
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado1-2.html
<日本版改良(JFE)スケール>
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado1-2-2.html
※平成28年4月より突風調査に使用されています。

(注2)竜巻やダウンバースト等の突風事例について、
気象庁が把握したものを
一覧で見られるよ。
1年の中でもたくさんの事例が発生しているんだね。
<竜巻等の突風データベース>
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/tornado/index.html

(注3)積乱雲からの下降気流が途中で弱まることなく地表付近まで降下し、
放射状に広がって、強く吹き出す風を起こす現象をダウンバーストって言うんだよ。
水平方向の広がりが4km以上をマクロバースト、
4km以内をマイクロバーストと分類して呼ぶこともあるよ。(出典:気象庁HPより)

<18号>

 

 

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