南岸低気圧 ~関東地方の雪~

『1月14日成人の日、関東地方や東北の太平洋側では大雪となりました。
思わぬ大雪にちびっこたちは大喜び!? 一方、お出かけをやめたり、電車が止まって家に帰れなかったりと、大変な思いをした人も多かったのではないでしょうか。               イラスト:三善和彦氏

今回の大雪をもたらしたのは「南岸低気圧」で、日本列島沿岸の太平洋上を発達しながら西から東に進む温帯低気圧(以下、低気圧と呼びます)(※1)のことです。

日本海側に雪が降る理由は、前回のお天気ブログ「冬の季節風」でご紹介しましたが、太平洋側の主に関東地方に雪が降るのは、1月~3月頃にかけて冬型の気圧配置(※2)が崩れたときに、この低気圧が関係することが殆どです。ただし、これらは一般論であることをご承知おきください。

1. 低気圧の進路(図1)
一般的には、八丈島のやや南側を通ると「雪」、北側を通ると「雨」。つまり、陸地に近いほど「雨」・遠ければ「雪」・遠過ぎると何も降らないという傾向があります。これは、低気圧には、北側に冷たい空気の寒気(かんき)域・南側に暖かい空気の暖気(だんき)域があって、陸地近くを通過すると暖気域がかかって雪にはならず、八丈島のやや南側を通過するときに、北からの寒気を一番引き込み易く、雪になり易いということなんですね。

2.地上気温と湿度(図2
雪になるか雨になるかは、気温だけでなく湿度も関係しています。地上の気温と湿度についての一般的な関係表によると、気温が低いほど雪になり易く、また、湿度が低いほど雪になり易いとされています。0℃以下ならば、ほぼ雪ですが、たとえば、地上気温3℃でも、湿度60%ならば、雪になることが多いということですね。

 

3.その他のポイント
地上の気温だけでなく、上空の気温によっても左右されます。たとえば、上空1500m付近の気温が氷点下4℃程度が、ひとつの目安になっていますし、それ以下の高度の空気の冷え具合も関係します。また、当然のことながら、低気圧の規模や発達度合、寒気の状況などにも関係します。

では、最後に、この1月14日の低気圧による横浜の大雪(最大積雪13cm)を検証します。
Ⅰ. 低気圧は、八丈島やや南方を通過しました。(図3)
Ⅱ. 正午の地上気温:0.4℃、湿度:96%でした。(図2)
Ⅲ. 上空1500m付近の気温は、9時で氷点下1℃程度でした。(資料省略)

(図3)1月14日正午の地上天気図(気象庁HPより)
一般論で言うと、Ⅰでは雪、Ⅱ・Ⅲでは雨かみぞれの範囲でしたが、おそらく、この低気圧の発達具合が強烈(報道では「爆弾低気圧」と表現していましたが、これは気象用語ではありません)で、より寒気を引き込んだために、雪になったのでしょうか。

このように、天気予報やニュースでの情報に加えて、自分で雪になるかどうかを推理し、その結果がどうだったかを確認することも、面白いのではないでしょうか。

 

《サニーちゃんのお天気メモ》

(※1)極地方の冷たい空気と熱帯地方の暖かい空気が混ざろうと渦を巻くことで温帯地方に出来る低気圧のことで、冷たい空気と暖かい空気の境として、進行方向の前方に温暖前線(図1赤い線)、後方に寒冷前線(図1青い線)が出来ることが多く、熱帯低気圧(台風)とは性質が全く違うんだよ。

(※2)冬型の気圧配置は、西の中国大陸方面に高気圧、東の太平洋方面に低気圧で「西高東低(せいこうとうてい)」と呼ばれるんだよ。これも、前回のお天気ブログ「冬の季節風」をもう一度見てね。

<ゼフ>