冬の「すじ状の雲」の話

天気予報を見ていると、「雲の様子を見てみましょう」という解説とともに雲の写真が登場することがあります※1
雲画像は「ひまわり」という人工衛星が宇宙からとった写真です。天気図を読むのはちょっとむずかしいけれど、写真なら「今日は日本中晴れてるな」「ここに大きな雲があるからここで雨が降っているんだな」などと一目で分かりますね。

大きな渦を巻いて中心に「目」のような穴が開いている雲・・・そう、これは台風。
夏から秋によく見る、おなじみの形です。

※2014年10月04日15時(赤外画像)台風18号が接近!
画像:気象庁HPhttp://www.jma.go.jp/jma/index.html)より

もう一つ、寒さがきびしくなるこれからの季節、分かりやすい雲の形があります。
それが冬の「すじ状の雲」。
日本海に、大陸から日本へ(北西から南東へ)とななめに細長い雲がすじのよう並んでいるのが分かるでしょうか?

※2014年1月13日15時(赤外画像)この日、日本海側は大雪に!
画像:気象庁HP(http://www.jma.go.jp/jma/index.html)より

この雲はどのようにしてできるのでしょう?

冬になると、大陸の北部に大きな高気圧ができて、冷たく乾いた空気(寒気)が日本に向かって流れ込んできます※2。 この冷たい空気が海の上を通るとき、温かい海から水蒸気を吸収して雲ができます※3。 大陸から日本に向かう強い風の流れにそって雲ができるので、「細長い雲がすじ状にならんだ形」になるのです。

「すじ状の雲」を見つけられるようになったら、その形をもう少し詳しく見てみましょう。
大陸の一番はじからすじ状の雲ができ始めるまでの距離を「離岸距離」と言います。実はこの距離からも大切なことが分かるのです。

※離岸距離…大陸の端から雲までの距離
画像:気象庁HP(http://www.jma.go.jp/jma/index.html)より

大陸のすぐそばから雲の筋が伸びているとき、つまり“離岸距離が短いとき”は上空の寒気が強いことが分かります。冷たく乾いた空気ほど、海の上に出てすぐに雲ができ始めるからです。逆に大陸から少し離れたところから雲の筋が伸びているとき、つまり“離岸距離が長いとき”は、寒気がそれほど強くないことが分かります。
離岸距離が短いとき=寒気が強いとき、日本海側の山沿いでは大雪になることがあるので注意が必要です※2

今度ニュースの天気予報で「筋状の雲」を見つけたら、大陸の方から冷たい空気が日本に向かってビュービュー吹き込んでいる様子を想像してみてください。そして、大陸と雲の間がどのくらい離れているかにも注目してみてください。
衛星画像を見ただけで「今日は寒い!」「日本海側は大雪かな?」と分かるなんて、なんだか気象予報士になったような気がしませんか?

 

《サニーちゃんのお天気メモ》

※1…静止気象衛星「ひまわり」が宇宙から写真を撮っています。人の目で見たのと同じ「可視画像」の他、雲から放出される人の目に見えない赤外線をとらえる「赤外画像」や「水蒸気画像」も使って空気の流れや湿り具合を調べているよ。

※2…冬になると大陸北部の方で高気圧ができて、日本の東側に低気圧が発達することが多いの。天気予報では「西高東低」「冬型の気圧配置」などと呼んでいるよ。冬の気圧配置と日本海側で雪が降るしくみについては「冬の季節風 ~颪(おろし)の話~(2012年12月)」も読んでみてね。

※3…もちろん日本海の水は冷たい!でも大陸から吹いてくる空気はもっと冷たく乾燥しているから、海から水蒸気を吸収するの。水蒸気と雲については「夏の入道雲の話(2012年7月)」を読んでみてね。

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