19世紀の観測機器にロマン求めて…

6月1日は気象記念日でしたね。
1年前の記事を読んで思い出してね
2015年5月28日の記事
2015年6月30日の記事


気象観測の歴史は、古くは紀元前6世紀からギリシアで風向の観測が、
紀元前4世紀からインドで雨量観測の記録があります。
かなり古い時代から人々が天気に興味を持っていたことが分かりますね。
農耕が中心の生活では、天気変化をつかむことはかなり重要だったのではないでしょうか。

その気象観測ですが、トリチェリの真空(1643年)(※1)より水銀気圧計の発明がなされ、
その後19世紀からは機器による観測が主流となっていきます。
1960年には世界初の気象衛星がアメリカ航空宇宙局より打ち上げられるなど、
観測技術の
発展には目覚ましいものがありますが、
現在でも視程観測や雲量、雲の種類天気観測など目視に頼る観測も多いのです。

 

さて、今でも19世紀当時を垣間見る事が出来る…
そんな気象観測の道具がいくつかあるのをご存知でしょうか?

・天気管(ストームグラス)
・晴雨予報グラス(液柱型気圧計の一種)
・ガリレオ温度計 …などがありますが、
今回はこの中から天気管にスポットを当ててみようと思います!

まず、天気管とは、どのようなものでしょうか…

天気管とは、こちらの写真のように、
ガラス管の中に水溶液と結晶が
入っているものです。(※2)

「天気」管という名前の通り、
この中にある結晶の変化で天気を予想することが出来る!
とされていた装置です。
天気変化に伴い、中にある結晶がさまざまに変化する、というのですから、
とっても興味深いですよね!


では、どんな風に変化するのでしょう?
結晶の変化と天気の関係はどうなっているんでしょうか?

天気管の結晶変化と天気の関連は諸説あるようですが、
大体次のような解説がなされている場合が多いです。
・晴れ傾向なら管内の固形分は完全に底に沈み液体は澄みきる
・雨に変わる前は、沈殿物の量が徐々に増え星のような形のものが液中を浮遊する
・嵐やひどい風の前は固形分の一部が溶液の表面まで達し、
大きな葉のような形に育ち、溶液は濁って発酵しているように見える。

本当にこんな風に、天気の変化で結晶の様子が大きく変わったらすごいですよね!

…しかしながら、実際はガラス管が密封されてしまっているので、
気圧や
湿度の影響をほとんど受けることがありません。
よって、嵐や風の予想は難しいと言わざるを得ないですね~残念です。


では、結晶はどんな時に変化するでしょうか?
実は天気管の結晶は、周辺の温度によって大きく変化します。


2016年6月16日 室温が高く、結晶は底に溜まっているのみ


2016年2月25日 室内が冷え込んで結晶が成長~星状の結晶も浮かんでいます


また、温度が変化したことで新たに生まれた結晶を確認することも

このように、温度で結晶が変化するものの、
天気管ではとても天気を予想することはできず、
19世紀の観測機器も現代の気象予報技術にはとてもかないません。

でも、この天気管の結晶を眺めていると、19世紀の様子が思い浮かびませんか?
正確な予想は出来なくても、天気管を眺めることで当時の様子に想いを馳せるのは、
とてもロマンのあることではないでしょうか?

ただ、天気管にはまだまだ分からないことも多いようで、
真剣に研究している学者さんもいらっしゃいます。
私たちはインテリアとして飾り、19世紀のロマンを感じ
ながら、
その様子を観察するのが楽しいかもしれません。

天気を調べる道具は自分で工作する事も出来ます。
自分で作った観測機で雨量や風速を調べてみるのも面白いですよ!

サニーエンジェルスのサイエンスカフェやお天気講座で、
工作をやっているときもあります!
ぜひ参加してみてくださいね!

 

<サニーちゃんのお天気メモ>

(※1)トリチェリの真空って?
1643年に、イタリアのエヴァンジェリスタ・トリチェリという物理学者が、
「なぜ10メートルより深い井戸から水を吸い上げる事が出来ないのか」を
説明するために行った実験の事。

一方を閉じたガラス管の中を水銀で満たし、
水銀を満たした皿の上でこのガラス管を立てると、
ガラス管が1mの時、中の水銀は76㎝の高さにしかならず、それより上の部分は真空になることを発見したんだよ。この実験で中の液体が大気によって押されていること、
また場所や日によってこの高さが変わることから、水銀気圧計が生まれたんだって!


(※2)天気管(ストームグラス)の中は?

ガラス管の中には、塩化アンモニウム、ショウノウ、エタノールっていう
化学物質と水が入っていて、塩化アンモニウムとショウノウの結晶が、
いろんな形を作ってくれるの。
19世紀の航海にとって、天気を知るための大事な道具だったそうよ。

<45号>